大判例

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東京高等裁判所 昭和52年(ネ)1937号 判決

一 当裁判所も、被告製品は本件考案の技術的範囲には属しないものと判断する。その理由は、次に付加するほかは、原判決理由の第一、二項のとおりであるから、これをここに引用する。

1 控訴人は、被告製品の胴体部の連結部に設けられた凹部においては、二枚の鉄板とその間に挾持された永久磁石が一体として本件考案にいう「磁石体」を構成する旨主張する。

しかし、被告製品における「二枚の鉄板とその間に挾持された永久磁石」が一体として「磁石体」を構成するということはできるけれども、その磁石体は、

(一) 胴体部の側面を分割する形をもつたサンドイツチ式構成のものを同部内に設けたものであつて、「胴体部における両足、両腕等とのそれぞれの連結部端部」に取り付けたものではないこと、

(二) 「各別に」、すなわち、両足、両腕等との各連結部に対応してひとつひとつ設けたものではないこと、

(三) 二枚の鉄板の所定位置に凹部が形成されているが、その鉄板自体の形状は、全体として「椀状」とはいえないこと

に徴すると、本件考案の構成要件を具備する磁石体であるとはいうことができない。

2 また、控訴人は、いわゆる利用関係についても主張するが、被告製品は、少くとも本件考案の構成要件の一を欠いていることが明らかである以上、本件考案と利用関係に立つべくもないことはいうまでもない。

二 以上のとおりであつて、控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却する。

〔編註その一〕本件における請求原因は左のとおりである。

一 本件考案において、人形の胴体部と足、腕の各端部に取り付ける吸着部材が磁石体と磁性体である場合には、その部材は椀状であることを要しないものであることは、原審において主張したとおりであるが、仮にそうでなく、本件考案における前項の各吸着部材がいずれも椀状の磁石体と磁性体であることを要するとしても、原判決別紙目録記載の人形(「被告製品」)はその要件を具備している。すなわち、

被告製品の足、腕の連結部端部に取り付けられた鉄球が「椀状の磁性体」に該当することはいうまでもないし(鉄球も取り付ければ半球となり、かつ、それ自体強磁性体である。)、また、被告製品の胴体部の連結部に設けられた凹部においては、二枚の鉄板とその間に挾持された永久磁石3が一体として本件考案にいう「磁石体」を構成しているが、右凹部がその形状において本件考案にいう「椀状」に該当することも否定し難いところである。そして、本件考案には単に「椀状」とあるだけで、それ以上に具体的な構成が示されているわけではない。加えて、作用効果についても、本件考案においてそれぞれの連結部端部に取りつけられた磁石体または磁性体が「椀状」に形成されているのは、胴体部の連結部端部が足、腕の連結部端部を回動自在に吸着支持するためであるが、被告製品の右鉄球及び凹部もかかる目的及び効果を有する。してみると、本件考案にいう「椀状」の意義をいかに限定して解するとしても、被告製品は、結局は本件考案の単なる設計変更の域を出ないものといわざるをえない。

二 また、右各吸着部材が胴体部におけるそれぞれの連結部端部に各別に取り付けられたとの点についても、被告製品はこの要件を具備している。すなわち、

被告製品の両足、両腕の各端部には磁性体たる鉄球が取りつけられていることは明らかであるし、前記のとおり、「椀状の磁石体」を構成する「凹部」が人形の胴体部における両足、両腕等とのそれぞれの連結部端部に各別に設けられているのである。もつとも、被告製品においては、二枚の鉄板の間に一個の永久磁石が挿設されているものではあるが、凹部に着眼する限り、人形の胴体部における両足、両腕との各連結部端部に各別に設けられていることに変りはなく、たとえ、右各凹部を構成する磁石体が人形の胴体内部においては一体として連結しているとしても、胴体部に対する腕、足等の連結部のそれぞれに磁石又は磁性体を取り付けて、胴体部に対する腕、足の位置を各別に自由に変えるという目的、構成及び作用効果においては、本件考案と全く同一である。そして、被告製品は、右各磁石体が胴体内部において一体として連結している点で、別個の技術的要素が付加されているが、それは均等考案に別の技術的要素が加わつた場合に過ぎないから、本件考案といわゆる「そつくり利用」の関係に立つものである。

なお、原判決は、本件考案の「実用新案登録請求の範囲」にいう「取り付けた」とは胴体部とは別体の椀状をした磁石体または磁性体を接着その他の方法により取り付けた構造を指すものと解しているが、右「実用新案登録請求の範囲」の記載をこのように限定して解釈すべき合理的な理由はないし、本件考案の目的及び作用効果からみて、胴体部と椀状の磁石体とが別体であるか否かによつて技術的に差異が生ずるものでもない。

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